宅地と通行権と・・・  NEW!    

◆あなたが購入しようとしている土地は大丈夫ですか?

弁護士 櫻井滋則 2003年4月28日


● 宅地と接道義務

宅地は、道路に2m以上接していなければなりません。


道路が通常の交通に必要なだけではなく、災害時の避難、防火、救急の経路としても必要不可欠であり、また日照、通風、採光などにも役立つことから、建築基準法43条1項でこのように定められているのです。


宅地はこのように接道義務を充たさなければならないことから、分譲地などでは、その前提として、行政(市町村長または都道府県知事)による道路位置指定を受けなければならないとされています。


もし、宅地が接道義務を満たしていない場合、建築確認申請に対して不適合通知処分がなされ、建物が建てられないことになります。


従って、宅地を購入する際には、この接道義務が充たされているかどうか、分譲地であれば道路位置指定などを受けているかどうかをチェックする必要があります。


   
◆ 宅地と通行権


また、宅地を購入する際には、公路への通行権が確保されているかどうかも重要なチェックポイントとなります。

  
●道路と通行権の種類


道路には、@一般人の自由な通行が認められている公路と、A原則として自由な通行が認められない私道とがあります。


このうち、Aの私道は私有地ですので、ここを通行するには、原則として通行権が必要となります。


通行権には、囲繞地通行権、通行地役権、通行の自由権などがあります。


そこで、以下、これらの通行権について順に説明していきます。


 ● 囲繞地通行権


囲繞地通行権とは、公路に直接通じていない土地(これを「袋地」といいます。)の所有者が、その袋地を囲んでいる土地(これを「囲繞地」といいます。)を、その所有者の承諾なしに公路まで通行できる権利をいいます。


囲繞地通行権が認められるためには、@「袋地」が直接公路に通じていない土地でなければなりません。またA「袋地」が他人の土地によって囲まれていなければなりません。


従って、「袋地」を、それと隣接する道路に接する土地の所有者が売買や相続などにより取得すれば、それまで「袋地」に付着していた囲繞地通行権は消滅してしまいます。


囲繞地所有者が「袋地」を取得した場合も同様です。


また、囲繞地通行権が認められた場合でも、通行者は、囲繞地の損害に対して、原則として償金を支払わなければなりません。


例外的に、「袋地」が生じた原因が共有地の分割や土地の一部譲渡である場合には支払わなくてもよいとされています。


● 通行地役権


通行地役権とは、自分の土地の便益のために他人の土地を通行できる権利をいいます。この場合の自分の土地を「要役地」、他人の土地を「承役地」といいます。


通行地役権は原則として、当事者間の契約によって成立します。


当事者間に明確な合意がない場合に、この契約の存否をめぐって隣地当事者間で紛争になることがありますが、承益地の所有者の受ける負担や不利益を考えると、そう簡単には契約の成立を認めることは難しいでしょう。


● 通行の自由権


通行の自由権とは、判例上、建築基準法の適用を受ける私道について認められる通行権をいいます。


この通行権も、他人の所有地を通行する権利である以上、簡単に認められるわけではありません。


その具体的な内容や要件については、まだ様々な議論がなされているところですが、少なくとも、通行者にとってその通行が日常生活上不可欠であることや、その通行が私道所有者に著しい損害を生じさせないということは重要な要件とされています。


建築基準法上の私道だからといって、当然に通行できることにはならないので、注意しましょう。

  
● 宅地と通行権のまとめ


以上のとおり、私道に対する通行権は、私道所有者の明確な合意がない限り、そう簡単に認められるものではありません。


従って、宅地を購入する際には、公路への通路が私有地を通行するものではないかどうか、またその場合に、以上のような通行権が確保されているかどうかを必ずチェックするよう注意して下さい。
 
       
◆ 宅地購入の注意点


宅地には、以上の他にも、様々な制限が課せられていることがあります。


宅地を購入される際には、制限の有無、内容について、注意する必要があります。


なお、宅地に制限がついている場合、宅地売買を仲介する不動産業者には、重要事項として、その制限等を説明する義務が課せられています。


従って、宅地を購入した後に、事前に説明のなかった制限等が発覚した場合には、不動産業者の責任も併せて検討する必要があるでしょう。



   

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