米川耕一法律事務所
カルテ等の保存期間  

弁護士鈴木謙吾 2001年6月29日
Q カルテやレントゲン写真等の医療記録は病院にどの程度の期間保存されているのでしょうか。
A(1)、まず、診療録(いわゆるカルテのことです)は、医師法24条により、5年間の保存義務が課されています。

 (2)、次に、診療録以外の病院日誌、処方箋、手術記録、エックス線写真等は、医療法21条1項14号及び同法施行規則20条11号により、2年間の保存義務が課されています。

  (3)、そして、保険診療においては、診療録以外の療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録(検査所見記録、エックス線照射録等)は、保険医療機関及び保険医療療養担当者規則9条により、完結の日から3年間の保存義務が課されています。

 また、保存期間の始期については、(3)以外は特に明文はありませんが、一般的には(3)と同様に診察の完了日と考えられているようです。

 以上をまとめますと、現在、通常の病院であれば保険に加入していないことはほとんど考えられませんから、誤解を恐れずに言えば、カルテは5年間、それ以外の書類は3年間の保存義務があると言えるでしょう。

 もちろん、実際に必要となる書類が(3)には該当せず(2)にしか該当しない場合も十分あり得ますので、以下に記載した条文を参考にして保存義務が2年なのか3年なのかを十分確認してください。

 また、保存期間の始期についても、例えば後遺症が続いている場合には診療が完結したとはいえない場合もあり得るでしょうし、時間的に非常に近接している場合であっても、例えば交通事故と病気というように全く異なる原因で、かつ同じ病院で診療を受けた場合にはそれぞれ異なる始期になり得ますので十分注意することが必要です。


「医療法」
第21条(病院の人員・施設の基準、罰則の委任)
第1項 病院は、厚生労働省令の定めるところにより、次に掲げる人員及び施設を有し、かつ、記録を備えて置かなければならない。ただし、政令の定めるところにより、都道府県知事の許可を受けたときは、この限りでない。
第 1号 療養型病床群を有しない病院にあつては、厚生労働省令で定める員数の医師、歯科医師、看護婦その他の従業者
第 1号の2 療養型病床群を有する病院にあつては、厚生労働省令で定める員数の医師、歯科医師、看護婦及び看護の補助その他の業務の従業者
第 2号 各科専門の診察室
第 3号 手術室
第 4号 処置室
第 5号 臨床検査施設
第 6号 エックス線装置
第 7号 調剤所
第 8号 消毒施設
第 9号 給食施設
第10号 給水施設
第11号 暖房施設
第12号 洗濯施設
第13号 汚物処理施設
第14号 診療に関する諸記録
第15号 診療科名中に産婦人科又は産科を有する病院にあつては、分べん室及び新生児の入浴施設
第16号 療養型病床群を有する病院にあつては、機能訓練室
第17号 その他厚生労働省令で定める施設
第2項 療養型病床群を有する診療所は、厚生労働省令の定めるところにより、次に掲げる人員及び施設を有しなければならない。
第1号 厚生労働省令で定める員数の医師、歯科医師、看護婦及び看護の補助その他の業務の従業者
第2号 給水施設
第3号 暖房施設
第4号 機能訓練室
第5号 その他厚生労働省令で定める施設
第3項 第1項第1号若しくは第1号の2又は前項第1号の規定に基づく厚生労働省令の規定によつて定められた人員を有しない者につては、政令で20万円以下の罰金の刑を科する旨の規定を設けることができる。
第22条(地域医療支援病院の施設の基準)
地域医療支援病院は、前条第1項(第14号を除く。)に定めるもののほか、厚生労働省令の定めるところにより、次に掲げる施設を有し、かつ、記録を備えて置かなければならない。
第1号 集中治療室
第2号 診療に関する諸記録
第3号 病院の管理及び運営に関する諸記録
第4号 化学、細菌及び病理の検査施設
第5号 病理解剖室
第6号 研究室
第7号 講義室
第8号 図書室
第9号 その他厚生労働省令で定める施設
第22条の2(特定機能病院の人員・施設の基準)
特定機能病院は、第21条第1項(第1号、第1号の2及び第14号を除く。)に定めるもののほか、厚生労働省令の定めるところにより、次に掲げる人員及び施設を有し、かつ、記録を備えて置かなければならない。
第1号 厚生労働省令で定める員数の医師、歯科医師、薬剤師、看護婦その他従業者
第2号 集中治療室
第3号 診療に関する諸記録
第4号 病院の管理及び運営に関する諸記録
第5号 前条第4号から第8号までに掲げる施設
第6号 その他厚生労働省令で定める施設


「医療法施行規則」
第20条(病院の施設・記録)
法第21条第1項第2号から第6号まで、第8号から第11号まで、第13号、第14号及び第16号の規定による施設及び記録は、次の各号による。
第 1号 各科専門の診察室については、1人の医師が同時に2以上の診療科の診察に当たる場合その他特別の事情がある場合には、同一の室を使用することができる。
第 2号 手術室は、診療科名中に外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、皮膚泌尿器科、泌尿器科、こう門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科及び耳鼻いんこう科の1つを有する病院又は歯科医業についての診療科名のみを診療科名とする病院においてはこれを有しなければならない。
第 3号 手術室は、なるべく準備室を附設しじんあいの入らないようにし、その内壁全部を不浸透質のもので覆い、適当な暖房及び照明の設備を有し、滅菌手洗いの設備を附属して有しなければならない。
第 4号 処置室は、なるべく診療科ごとにこれを設けることとする。だたし、場合により2以上の診療科についてこれを兼用し、又は診療室と兼用することができる。
第 5号 臨床検査施設は、喀痰、血液、尿、ふん便等について通常行われる臨床検査のできるものでなければならない。
第 6号 エックス線装置は、内科、心療内科、呼吸器科、消化器科、胃腸科、循環器科、リウマチ科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、皮膚泌尿器科、泌尿器科、リハビリテーション科及び放射線科の1つを有する病院又は、歯科医業についての診療科名のみを診療科名とする病院には、これを設けなければならない。
第 7号 消毒施設は、蒸気、ガス若しくは薬品を用い又はその他の方法により入院患者及び職員の被服、寝具等の消毒を行うことができるものでなければならない。
第 8号 給食施設は入院患者のすべてに給食することのできる施設とし、調理室の床は耐水材料をもつて洗浄及び排水又は清掃に便利な構造とし、食器の消毒施設を設けなければならない。ただし、病院内において食器の洗浄業務が行われない場合にあっては、食器の消毒設備を設けないことができる。
第 9号 暖房施設は、診察室、処置室、病室、エックス線室、分べん室及び新生児の入浴施設につき適当な暖房のできる施設でなければならない。ただし、診療上特別の事情がある場合にはこの限りでない。
第10号 汚物処理施設は、病毒に汚染し又は汚染の疑いのある汚物を適当に処理することのできる焼却炉、浄化槽その他の施設でなければならない。
第11号 診療に関する諸記録は、過去2年間の病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、検査所見記録、エックス線写真並びに入院患者及び外来患者の数を明らかにする帳簿とする。
第12号 療養型病床群を有する病院の1つ以上の機能訓練室は、内法による測定で40平方メートル以上の床面積を有し、必要な器械及び器具を備えなければならない。
第21条の5(地域医療支援病院の施設・記録)
法第22条第1号から第8号までの規定による施設及び記録は次のとおりとする。
第1号 集中治療室、化学、細菌及び病理の検査施設並びに病理解剖室は、当該病院の実情に応じて適当な構造設備を有していなければならない。
第2号 診療に関する諸記録は、過去2年間の病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、紹介状及び退院した患者に係る入院期間中の診療経過の要約とする。
第3号 病院の管理及び運営に関する諸記録は、共同利用の実績、救急医療の提供の実績、地域の医療従事者の資質の向上を図るための研修の実績、閲覧実績並びに紹介患者に対する医療提供及び他の病院又は診療所に対する患者紹介の実績を明らかにする帳簿とする。
第22条の3(特定機能病院の施設・記録)
法第22条の2第2号から第4号までの規定による施設及び記録は、次のとおりとする。
第1号 集中治療室は、集中治療管理を行うにふさわしい広さを有し、人工呼吸装置、その他の集中治療に必要な機器を備えていなければならない。
第2号 診療に関する諸記録は、過去2年間の病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、紹介状及び退院した患者に係る入院期間中の診療経過の要約とする。
第3号 病院の管理及び運営に関する諸記録は、過去2年間の従業者数を明らかにする帳簿、高度の医療の提供の実績、高度の医療技術の開発及び評価の実績、高度の医療の研修の実績、閲覧実績、紹介患者に対する医療提供の実績並びに入院患者、外来患者及び調剤の数を明らかにする帳簿とする。

「医師法」

第24条(診療録の記載および保存)
第1項 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
第2項 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、5年間これを保存しなければならない。

「医師法施行規則」
第23条(診療録の記載事項)
  診療録の記載事項は、下記の通りである。
第1号 診療を受けたものの住所、氏名、性別及び年齢
第2号 病名及び主要症状 
第3号 治療方法(処方及び処置)
第4号 診療の年月日
〈*同旨−歯科医師法施行規則第22条)

「保健医療機関及び保健医療療養担当規則」
第 8条(診療録の記載・整備)
保健医療機関は、第22条の規定による診療録に療養の給付の担当に関し必要な事項を記載し、これを他の診療録と区別してせいびしなければならない。
第 9条(帳簿等の保存)
保健医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から3年間保存しなければならない。ただし,患者の診療録にあっては、5年間とする。
第22条(診療録の記録)
保険医は、患者の医療を行った場合には、遅滞なく、様式第1号又はこれに準じる様式の診療録に、当該診療に関し必要な事項を記載しなければならない。

「保健婦助産婦看護婦法」
第42条(助産録の記録・保存)
第1項 助産婦が文面の解除をしたときは、助産に関する事項を遅滞なく、助産録に記載しなければならない。
第2項 前項の助産録であって病院、診療所又は助産所に勤務する助産婦のなしたる助産に関するものは、その病院、診療所又は助産所の管理者において、その他の助産に関するものは、その助産婦において5年間これを保存しなければならない。
第3項 第1項の規定による助産録の記載事項に関しては、省令でこれを定める。 

「保健婦助産婦看護婦施行規則」
第34条(助産録の記載事項)
  助産録には、下記の事項を記載しなければならない。
第 1号 妊産婦の住所、氏名、年齢及び職業 
第 2号 分娩回数及び生死産別
第 3号 妊産婦の既往疾患の有無及びその経過
第 4号 今回妊婦の経過、所見及び保健指導の要領
第 5号 妊娠中医師による健康診断受診の有無(結核、性病に関する検査を含む)
第 6号 分娩の場所及び年月日時分
第 7号 分娩の経過及び処置
第 8号 分娩異常の有無、経過及び処置 
第 9号 児の数及び性別、生死別
第10号 児及び胎児付属物の所見
第11号 産じょくの経過及びじょく婦、新生児の保健指導の要領
第12号 産後の医師による健康診断の有無

















            














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