不動産取引(決済・引渡)   

事務局長 千田章夫 2002年7月11日

 最近、不動産取引の件数も、少しづつ増えてきているようです。

 契約締結等を含めいろいろな問題があるかと思いますが、10年以上前に不動産取引の決済に立ち会った際に、危うく決済が不能になりかけたことがありましたので、今回は不動産取引の決済時の注意事項をご説明致します。


一般的に、不動産取引の決済は、売買契約締結後に融資先の銀行等のスペースをお借りして関係当事者が一同に会して行われることが多いようです。


 その日も売主、買主、仲介業者及び司法書士が決済場所である銀行に定刻前に集まりました。


 早速、司法書士が所有権の移転登記に必要な書類の点検(司法書士は、決済の当日法務局において、必ず直近の不動産の謄本を請求し権利関係の最終確認を行います。)を始めようとしたところ、売主が登記済証(権利書)を自宅に忘れてきたことに気づき、すぐに売主が自宅に取りに戻ることになりました。


 やむなく売主が不在のまま、その他の手続きを先行することになりました。司法書士が書類の点検を続けると、登記委任状に押印してある売主(ご主人)の印影が印鑑証明書の印影と微妙に相違していました。


 この原因は二つあり、一つは長年使用している間に印鑑の一部が摩耗欠損してしまったことです。


 もう一つは印鑑証明の登録の際に、印鑑に朱肉がつき過ぎていた為に、多少滲んだ印影の状態で登録されてしまったことです。


 その場で、何度か印影を確認しましたが、やはり微妙に相違していました。


 売主の奥様に確認すると間違いなくご主人の実印であるとのことでしたが、管轄の法務局の登記官に電話で事情を説明したところ、印影を見た上でないと判断できないという回答でした。


 この場合、登記官に同一の印影と判断されなかった場合には、仮に本件売買契約に基づく所有権移転登記を申請し、受付印が押されたとしても補正の対象となります。また、補正期間内に、売主は印鑑証明の登録をし直す必要が生じます。

 
 最悪は申請を却下される可能性もあります。

 これらの事情を当事者に説明したところ、とにかく全員で法務局に移動して登記官に印影を確認してもらうことになりました。


 本来なら、この辺で決済の日時の延期の話が出ても不思議ではない場面でした。


 慌ただしく、全員で管轄の法務局に移動し、登記官と交渉の末、同一印影として手続きが可能との判断が得られました。


 その後、狭い法務局内で現金を数えたり、小切手が交付されたりと決済は続けられました。


 これで手続きも無事に終了かと思ったところ、売主が建物の鍵を持参してきていませんでした。

 事情を伺うと長年売却する建物には住んでいなかったので、近所に住む兄弟に管理を任せており、下町ということもあり普段から家の鍵を掛ける習慣がなかったとのことでした。


 何とも呑気な売主ですが、買主もここまでくると怒りを通り越して呆れていました。


 結局、後刻、鍵を買主に交付することで了承が得られ決済は終了しました。


 翌日、買主に確認したところ鍵は無事に受領されたとのことで安心致しましたが、建物の中には粗大ゴミ等が残っていたそうです。


 不動産の決済に限りませんが、契約等の際には事前に取引に必要な書類(書類の有効期限等も確認して下さい。)等は十分に確認をして当日忘れず持参をすることが重要です。


 また、実印については、長年使用していると摩耗等も生じますので、必要に応じて印鑑証明書と照合をして、場合によっては実印を作り直し登録をし直すことをお勧め致します(法務局においては、印鑑の縁が欠けているだけの場合は同一印影との取扱をして頂けるようです。)。


 また、建物の引渡しの際には鍵(合鍵も含め)、最近では駐車場のシャッターのリモコン等もあるかもしれませんが、それらを全て買主に交付しなければなりませんので注意が必要です。


 立つ鳥跡を濁さずとの言葉もありますように、売主は引渡しまでには粗大ゴミ等をきちんと処理することも必須条件かと思います。

            以 上

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米川耕一法律事務所
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