ゴルフ場預託金返還
ゴルフ場への預託金返還請求訴訟
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弁護士櫻井滋規 2004年5月19日
これまでのゴルフクラブの預託金返還問題
バブル崩壊後、ゴルフクラブ会員権の価格が下落し、ゴルフクラブの会員は、その会員権を市場で売却できない、もしくはできても大幅に額面割れしてしまうという状況に追い込まれました。
多くの会員は、預託金相当額を市場で回収することを断念し、直接ゴルフクラブに対し、預託金の返還を求めるようになりました。
これまでの預託金返還請求訴訟は、ゴルフクラブ側が、理屈を考えだして、何とか据置期間の延長を主張するものの、結局反論として認められず、会員側が勝訴するという傾向にありました。
勝訴判決を得た会員は、ゴルフクラブに対し強制執行をかけることによって、預託金を回収していました。もっとも、ゴルフクラブの所有する不動産や施設には、既に巨額の担保権が設定されているのが通常であり、一般的に会員側は、ゴルフクラブに入る日々の売上金を差し押さえるという方法で、回収していました。
ゴルフクラブの営業譲渡による対策
預託金返還据置期間の延長の主張が、裁判上通らないことがほぼ決まってくると、ゴルフクラブとしても、新たに別の手段を講じるようになりました。
差し押さえを回避するために、ゴルフクラブの営業を別会社に譲渡するという手段をとるようになったのです。すなわち、預託金返還義務を負うのは、あくまでゴルフ会員権を発行したゴルフクラブ(仮に「A社」とします。)であり、会員が差し押さえられる財産も、A社が所有する財産のみとなります。
そのため、ゴルフクラブの営業がA社から別会社(仮に「B社」とします。)に譲渡されれば、その売上金もゴルフクラブの営業を行うB社のものとなり、会員は、その売上金を差し押さえることができなくなってしまいます。
それに対して、会員側は、預託金返還訴訟で、B社をも相手方とするようになりました。
その訴訟では、会員側は、このような営業の譲渡が行われた場合でも、A社とB社とで、オーナーが同一であるとか、役員が重複しているとか、経理が事実上一体であるなど、事実上一体と評価できる場合には、B社の法人格が否認され、B社にも預託金の返還義務が認められると主張しました。
裁判所も現にそのような理屈を採用し、会員側の勝訴裁判例を出すようになりました。
営業譲渡における更なる問題
問題は、B社がA社にとって、全くの第三者である場合です。
営業譲渡の譲受会社が、第三者の場合には、預託金を預かった会社との間の、事実上の一体性が否定される以上、返還義務は認められないことになり、差し押さえはできないことになります。
つまり、訴訟でA社には勝訴できますが、勝訴しても、A社には財産がないので結局預託金は回収できず、またB社をも訴訟の相手方としたとしても、B社との関係では敗訴してしまい、B社の財産は差し押さえられないのです。
平成16年2月20日の最高裁判例
この点について、最高裁で、平成16年2月20日に、新しい判例が出ました。
すなわち、ゴルフ会員権の発行会社から、後にゴルフクラブの営業を譲り受けた会社が、同じゴルフクラブの名称を従来通り使い続け、かつ営業を譲り受けた時点で、会員に対して積極的に説明していない場合には、商法26条1項を類推適用して、その譲り受け会社にも、預託金の返還義務があると判断したのです。
商法26条1項は、「営業ノ譲受人ガ譲渡人ノ商号ヲ続用スル場合ニ於テハ譲渡人ノ営業ニ因リテ生ジタル債務ニ付テハ譲受人モ亦其ノ弁済ノ責ニ任ズ」と規定されています。
これは、営業の譲渡がなされても、営業の譲受人が、譲渡人の会社と同じ「商号」を使って営業を続けた場合には、譲受人にも、譲渡人の抱えた債務の返済義務があるということを規定したものです。
この最高裁判例は、商法26条1項の「商号」に「ゴルフクラブの名称」が含まれる(類推の基礎がある)との解釈を行い、ゴルフクラブの営業を譲り受けた会社が、譲渡した会社と同じ「ゴルフクラブの名称」を使ってゴルフクラブの経営を行った場合には、譲渡した会社が負担する債務について返済義務があると判断したわけです。
もっとも、最高裁判例も、「ゴルフクラブの名称」を変えていなかったら、すべて営業の譲受人に預託金返還義務があると判断しているわけではありません。
営業が譲渡されたときに、営業の譲受人が、すぐにゴルフクラブの会員に対して、営業主体が代わったことを告知したり、あるいは既存会員にはプレーさせないということを宣言するなどしていれば、会員は、営業主体が代わったことを認識できるため、営業の譲受人に対する返還請求は認められないとされています。
とはいえ、この判例が出たことにより、営業譲渡がなされた際、ゴルフクラブの会員にとって、以前より預託金の返還の間口が広がったものとはいえるでしょう。
以 上
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