今回は、「ストレートな生き方、かわす生き方」です。


                    2001年3月2日


 我々弁護士は職業柄様々な性格の相手方と会います。怒鳴る人、不満を言いつづける人、脅迫してくる人も珍しくはありません。
 このような人々と交渉したりすることは必ずしも愉快なことではありません。
 しかし、同じ弁護士の中でも恐れを抱く人と、あまり感じない人がいます。長年の弁護士生活を経て、私は、前者と後者には目の前の物事に対する接し方に大きな違いがあることに気が付きました。

 前のタイプの人は、性格的に何でも生真面目に対応します。後者はおっとりしたところがあります。いうならば、前者は物事と真正面から取っ組み合いをし、後者は無意識のうちにですが、柳に風という感じで問題をかわしています。
 前者を直球型、後者をカーブ型と呼んでよいでしょう。


 
 会社経営においても資金などの悩み事に直面すると、直球型の経営者は客観的に見れば些細なことを必要以上に深刻に受け止めてしまいがちですが、カーブ型の人は受け止め方に柔軟性があるので、さほど深刻にうけとめず、ストレスの感じ方が弱く、その結果、深刻にはなりませんが、考えに甘さがあって、時機を失してしまうこともあります。
 
 一方、ここ一番という時になると、直球型はその真面目さ故に爆発的な力を発揮し、すばらしい仕事をやり遂げることが多々ありますが、カーブ型はどこかで妥協してしまって仕事の完成度が今ひとつということがあります。
 
 従って、両方の性格を併せ持つようにして、そのときどきの状況に応じて、あるときは直球型、あるときはカーブ型というように、使い分けることができるようになることが理想的と思われます。


 
 では、その状況に応じた変幻自在性を身につけるにはどうしたらよいでしょうか。
 まず、変幻自在になってもバック・ボーンとして一貫した経営哲学をもたなければ、単なる気分屋に終わってしまいます。
 どのような経営哲学を持つべきかは多くの主張がなされていますので、そのうちから自分に最適と考えるものを選びます(私自身の考えは別の機会に譲ります。)。


 
 次に、特定の状況に対してまず最初に出てくる自分の態度はいままで形成された性格が反射的に出ているわけですから、一歩引いて別の反応の仕方を意識的に探します。
 
 そこでもう一考。どちらの態度が目前の状況の解決のために優れているかを検討します。この時、第三者的にアドバイスをしてくれる人がいるかを考え、その人だったらどうするだろうかと心を鎮めて考えてみることがとても有効です。


 最後に、以上の手順全体が一つの心の鍛錬と考えてみてください。 











             
バックナンバー > ストレートな生き方
米川耕一法律事務所