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法律研究

計画的な事業承継を〜中小企業における相続対策〜 (2008/08/20)

 昨今、中小企業経営者の平均年齢は約57歳まで上昇し、高齢化が進んでおります。経営者の引退予想年齢は約67歳とみられているため、今後10年の間に、多くの中小企業が世代交代を余儀なくされることとなるでしょう。このような状況から、近時、事業承継をどのように行うかという問題が話題を呼んでおります。
 多くの中小企業の経営者の方は事業承継対策は相続税対策くらいしか考えていないことと思います。しかし、ハッキリ言って事業承継対策が相続税対策だけでは不十分です。
 例えば、経営者が急死してしまった場合、しっかりとした遺言書が作成されていれば良いのですが、事業承継対策をしていなかったとなると、遺言書がない、遺言書に不備があるといったことがよくあります。このような場合、相続人が複数いれば、通常は各相続人に権利があります。遺言書がなければ法律に定められた相続分が各相続人に認められるからです。ここで具体例を挙げます、経営者XにA、Bという2人の子がいて(Xの法定相続人はA、Bのみといたします。)、Aは会社の経営に長年かかわってきたが、Bは家出同然に出てしまっていたという例です。Xが普段からAに経営権を譲ると言っていたとしても、Xの遺言書がなければ相続分は通常AB平等です。そうすると、AB間で争いが生じる可能性が高いといえます。遺産分割協議が整えばよいのですが、これがうまくいかなければ家庭裁判所における調停→審判という手続が必要になります。中小企業の場合、経営者の個人資産と会社の資産との区別が困難な場合も少なくありません。事前財産の整理をしておかなければ、遺産分割協議の前に相続財産の範囲を確定する裁判が必要となり、決着までに非常に長い時間がかかってしまいます。そうなると、長期間会社の経営が不安定となり、最悪の場合は廃業という事態にもなりかねません。
 このような事態を防ぐためには民法(相続法)の活用が必須といえるでしょう。
 しかし、民法(相続法)の活用だけでも不十分です。なぜなら、一定の相続人には遺言でも奪えない遺留分という権利が民法上保障されているからです。例えば、先ほどの具体例を前提として、Aを後継者とするために株式を含むすべての財産をAに譲るという内容のXの遺言があっても、通常、BはXの遺産の4分の1を遺留分として民法により保証されているのです。そうなると、例えばXが総議決権数の51%という株式会社の意思決定を行えるギリギリの株式(議決権)しか有していなかった場合、通常Aは総議決権数の38.25%しか相続できませんから、会社の経営権を承継できなくなってしまいます。AとBの仲が悪ければ、会社の経営に重大な影響が生じかねません。
 このような事態を少しでも回避するためには会社法の活用が必須です。具体的には、黄金株の発行や議決権制限株式の発行等が考えられます。これらの制度の導入には定款変更をはじめとする多くの法的手続が必要となります。
 以上のように、事業承継を円滑に行うためには相続税対策のみならず、民法(相続法)と会社法の活用が不可欠です。中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(平成20年10月1日施行)の利用も考えられて良いでしょう。
 なお、時間をかければかけるほど、より円滑な事業承継が行える計画が立案可能です。事業承継には長期計画が最適といえるでしょう。事業承継に関する事前コンサルティングのご相談はお早めに。                       

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