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法律研究

執行停止の申立 (2008/02/07)

  第一審で金銭の支払いを命じる判決を受け、その判決に仮執行宣言が付いていた場合、いったん強制執行を免れるためには、どのような手続をしたらよいでしょうか。


仮執行宣言は、未確定の終局判決に執行力を付与するもので、勝訴者は、仮執行宣言付判決を得た場合には、判決が確定した場合と同様に執行することができます。

強制執行を免れるためには、控訴の提起に伴う強制執行停止の制度(民事訴訟法403条1項3号)があります。

強制執行の停止とは、執行機関が将来に向かって強制執行を開始したり続行することを止める措置です。安易に執行を止めることは許すべきではありませんが、全く執行停止ができないというのでは、後に判決の取消などを得た債務者の保護に欠けるため、暫定的にいったん認められた執行力を奪う制度です。既にした執行処分を取り消す処分である執行処分の取消しという制度もありますが、ここでは強制執行の停止についてだけ説明したいと思います。

 執行停止の申立ては、原則として控訴審裁判所に行いますが、民事訴訟法404条1項において、仮執行の宣言を付した判決に対する控訴の提起があった場合において、訴訟記録が原裁判所に存するときは、その裁判所が裁判をすると記載されておりますから、当該場合には、原裁判所すなわち一審裁判所に申立てることになります。

控訴の提起は一審裁判所に控訴状を提出してしなければなりませんし(民事訴訟法286条1項)、執行停止は直ちに求める場合が多いでしょうから、通常は、一審裁判所に、控訴の提起とともに、強制執行停止の申立てをすることになると思われます。

裁判所は、強制執行の停止決定をする場合に担保を立てさせるか否かを裁量で決めることができます(民事訴訟法403条1項)。担保を立てさせる場合、執行停止における担保額について、裁判所は、当該事件の具体的事情及び申立ての理由についての疎明の程度を考慮して妥当な額を決定します。

執行の停止決定を得るためには、原判決の取消し若しくは変更の原因となるべき事情がないとはいえないこと、又は、執行により著しい損害を生ずるおそれがあることについて、疎明が必要です(民事訴訟法403条1項3号)。

疎明とは、ある事実の存否につき、裁判官が一応確からしいとの心証を得た状態などを言います。裁判官に十中八九間違いないという確信を得させなければならない証明までは必要がありません。

担保を立てる場合において、供託をするには、担保を立てるべきことを命じた裁判所又は執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければなりませんので、注意してください(民事訴訟法405条1項)。


では、強制執行停止決定を得た場合、事実上、一審原告の強制執行の着手も封じる方法はあるのでしょうか。

といいますのは、強制執行停止決定を出す場所と強制執行を申立てる場所は同じ裁判所内だったとしても部又は課などが違ったりしますので、強制執行停止決定を得ていても、強制執行が開始されてしまうことがあるものと考えられるからです。

もちろん、強制執行が開始されてしまった場合でも、既に得ている強制執行停止決定の正本を執行機関に提出すれば、強制執行は停止されます(民事執行法39条1項6号)。

しかし、銀行預金口座などに対して強制執行が開始されてしまうと、一時預金口座が凍結されてしまったり、取引銀行に紛争事実が知られてしまうなど、不都合なことがありうるので、できれば強制執行の開始自体を阻止したいものです。

この点、事前に執行機関に対して、強制執行停止決定を得た旨の上申書を提出することが考えられます。上申書を提出すれば、執行機関が強制執行停止決定が出ていることを把握できるため、事実上、強制執行の開始を阻止できることが期待できます。ただ、東京地裁の債権執行の係の方に確認したところ、まだ事件になっていない段階での上申書の受付はしていないとのことでした。

また、上申書の提出ができないのであっても、執行機関が強制執行の申立てがあった場合に、執行停止決定が出ているかを確認すれば、無駄な強制執行の開始をしないで済むことになりそうです。

しかし、東京地裁では、強制執行の申立てがあった場合に、既に執行停止決定が出ているかを確認する体制はとっていないとのことでした。

さらに、事実上、相手方に強制執行停止決定を得たので強制執行をしないようにとの連絡を取る方法も考えられます。

連絡を受けた相手方が強制執行停止決定が出たことを知った上で、あえて強制執行をしてくる可能性は低いと思われますが、仮に強制執行をしてきた場合には、不法行為による損害賠償請求ができるのでしょうか。

この点、執行停止決定が債権者に送達された後になされた強制執行の申立も当然に違法となるわけではなく、権利の濫用となるものでもないとの裁判例があります(昭和60年2月18日大阪高等裁判所決定)。

この裁判例によれば、不法行為による損害賠償請求はできないこととなりそうです。

しかし、執行停止決定に関する事例ではありませんが、免脱担保が立てられていることを知りながらあえて仮執行免脱宣言が付された判決に基づいて強制執行をしたという事例では、既に免脱担保が立てられていることを知りながら強制執行の申立を行い、執行機関をして強制執行手続をとらせることは、不法行為としての違法性を備えるものと解されるとする裁判例があります(平成4年6月17日東京地方裁判所判決)。

上記裁判例に関する詳細な分析はここではしませんが、執行停止決定の場合に不法行為による損害賠償請求を一切認めないのは妥当な結論ではないと思われます。

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